花の戦争

アステカでは戦争で得た捕虜を宗教的犠牲に捧げるため意図的に小国を滅ぼさず温存していた。この小国との戦いは「花の戦争」と呼ばれ神に捧げる捕虜を得ることだけが目的のものだった。捕虜は生きたまま心臓を摘出されるが、これを名誉なことと理解していた。現在の観点からは野蛮・残酷に見えるが少数の戦闘員の儀式的な死によって世界の秩序が保たれるのだとしたら非常に合理的で「ヒトにやさしい」システムだ。古代中国の殷の焙烙の刑も焼けた銅の柱に罪人を這わせて焼き殺すという残忍なものだが、その強烈なイメージが犯罪を阻止していたのなら余計な罪人とその被害者を未然に防いだわけだ。神を信じない散文的な世界観がどれほどの人的損失を重ねてきたか。