フィクション
世界後出しじゃんけん委員会は初の国際大会を企画しているが、ルール作りの段階で難航している。相手が出してから0.1秒後までに出すのはOKとか、いったん出しかけた手を途中で変えるフェイントは何回までOkとか細かい議論が交わされる。さらに、いったん決ま…
孤独に苦しんでいる人は自分の孤独さを訴えて人にすがろうとする。些細な体の不調を延々と訴えるが治療法がないものは有効なアドバイスのしようもない。ただ「そうだね、たいへんだね」と聞いているより仕方がないものだ。孤独は腐臭を放つ膿のたまった傷の…
自衛隊は陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊のほかに電脳自衛隊の創立を計画している。自衛隊員募集のポスターではアニメ顔の隊員たちが登場するが、電自のキャラクターは現在考案中である。（嘘です）
「あのー、ちょっと聞いていいですか？」 「なんでしょう？」 「福耳って言われませんか？」 「あーそうですね。仏陀みたい、だとかｗ。言われます。」 「それで得したことってあります？」 「そうですねー？夜に大きなリュックをしょって歩いていても職質さ…
「このバーコードのところをスマホで読ませてください。」 「タンパク質12g、脂質９ｇ、炭水化物５ｇ、食塩相当０．９ｇ、って出ますね。」 「これをその日食べるやつ全部についてやってみてください。バーコードのないやつは写真をとるとAIがだいたいの重さ…
その年には空に超新星が現れた。突然現れた星に世の人々は恐れた。超新星の放射は何光年も離れたここにも降り注いだ。電離放射が雲の核を多数形成し、その年は例年になく雲の多い年となった。雨が降り続き、人々は収穫を心配した。川の水位が徐々に上がって…
「久しぶりに同窓会で会ったらSさんはやっぱり”ぬとりだって”たわ。」 「なんだい？その”ぬとりだつ”ってのは？」 「田舎の言葉でね、”人と違って目立っているけど憎まれない”ってとこかな？」 「ふーん、たとえば？」 「もうそれなりの会社のそれなりのポジ…
蛮族の侵入にさらされた住民たちは川の中州に住居を建造した。中州といっても河口に近いここでは潮汐によって満潮になると水面下に沈んでしまう。ここに住居を立てるために上流からいかだを仕立てて木材を流し、干潮の間に杭を立てたのだ。こうして、当初は…
「そば粉をこねて薄ーく伸ばすでしょ？これを包丁で切るとお蕎麦だけど。」 「どうするの？」 「甘みそを薄く全面に塗って端からこうくるくるって巻いていくわけ。」 「切ったら渦巻き模様になるね。」 「切るのは蒸してからね。」 「蒸すときの匂いはそばだ…
「今日は夏休み前の最後の実習です。みなさん見たものをすべて英語で表現してください。」 "it is raining all around" "A candidate for the next election is speaking in high tone" "Some people seeing him are wearing costume playing out fitting" "…
「Deocoが女子高生の匂いになるって話題らしいね。」 「女子高生かどうかは知らないけどオッサンの汗臭いにおいかがされるよりはいいね」 「なんか禁煙原理主義みたいに体臭ケア原理主義みたいなのが広がりそうで怖いよ」 「考えすぎじゃないの？」 「いや、…
「もっと人と話すように言われたよ」 「えー、それはだめよ、あなた話すと毒が出るんだから」 「そうだよね。知らず知らず人を傷つけるようなこと言ったり」 「て、いうより単純に言うことが不気味でグロいってことかな？」 「完璧にスルーしてくれる君は得…
クジラの骨が海底に沈むとその分解から得られるエネルギーが光の届かない深海の生物群の拠点になる。点々とつらなる脊椎骨にむらがるシャミセンガイや真っ白いエビ。生命の循環を感じる構図だ。さきほど人体のコンポスト化を許可した米国では新たに「深海葬…
洗浄トイレになれるとほかのトイレは使いたいくなくなるが和式では実装が難しい。おしりの位置が特定しにくいので狙った位置に水流を届けるのがむずかしくなるのだ。しかし和式便器の利点は数々ある。しゃがむ姿勢をとることで自然と下肢筋力のトレーニング…
もっとみんなと雑談をしろと言われる。関心の範囲がずれているから苦手だなー。雑談が得意な人は人に関心があるのだ。それぞれの人の興味のあるジャンルとかよく覚えていて最新のネタを仕入れていたりする。スポーツの結果とか話題のおいしい店の情報とかを…
ヌトリダテコは現地の言葉で「テコ川の島」の意味でテコ川の河口付近にできた川中島である。現在は島全体が自然保護区になり森に覆われている。レーザー測量の結果ここに古代の墳墓を思わせる幾何学的な構造物が見つかっている。現地では島全体が聖地とされ…
「気分が沈んでるの。なにか浮上させられるネタない？」 「まわりを下げて相対的に上げるのはどう？」 「なんか下品でやだな。」 「じゃあ上下を逆転させてみるのは？」 「あら素敵！ってなるわけないだろ？」
「何か言うこと忘れてない？」 「君を愛している」 「そうじゃな・く・てー、今週の予定よ。晩御飯いらない日はいつ？」
「本日はG20のためはるばるお越しいただきありがとうございました。ホスト国としてささやかなアトラクションをご用意しましたのでお楽しみください。」 「みなさまのお席の前に設置されたコンベヤには麻雀牌に模したすしが運ばれてきます。お好きなネタを集…
K塾は夏休み特別講座を開設した。夏休みにふと嫌になって日常から離脱したくなっても小学生や中学生には無理がある。そこでボランティアの指導員の協力で非日常を体験できる講座だ。言ってみれば家出したい子供が危険にさらされることなく家族と離れて一人の…
聖アテナ女子学院では通学時の痴漢被害を避けるためアウターシェルの着用を認める決定をした。通常の制服のそとからまとうことのできるシェルはアルミと炭素繊維の複合素材で上位バージョンではリモートスイッチで軽度の電気ショックも与えられる。デザイン…
かつて王位を簒奪された流浪の王族が1300年の時を超えて帰国を果たした。身分をとわず本人の努力しだいで登用されるしくみを取り入れるや停滞していた人口は激増。しかしいい時は続かない。海外領土の拡張を懸念した外国の干渉で王はもとの領土へと撤退を余…
「最近周りの人がはだかの王様に見えるんです。」 「え？何か変なアプリの入った拡張現実のゴーグルでもしてないですか？」 「いやーたぶん自分の認識のゆがみからだと思うんですが。」 「本当に裸に見えるんですか？」 「まあ、たとえと申しますか、言って…
ヒトの皮に情報を記録する方法の一つとして遺伝子加工した毛根を植える手法が開発された。毛包の維持再生に必要な部分以外のゲノムを削除し、そこに人工的な配列で情報を記録する。植えられる毛根を列ごとに変えていくことで一人の人間に植えられる機密情報…
お得なことに目のないまる子は長じてさる量販店のやりて店長になった。「わたしゃつかれたよ」といいながら部下にサービス残業をおしつける姿はパワまる子ちゃんと言われている（この話はフィクションでちびまる子ちゃんとは関係ありません）
「人間にしかできないことをやれるって楽しい？」 「もちろんですとも。」 「でもリスクもあるだろ？」 「大丈夫です。兄弟がたくさんいますから。」 「兄弟？」 「そうなんです。２１世紀の命がけのユーチュバーみたいなことをいっぱいしてみるので。」 「…
細菌が作るねばねばした塊は抗生物質の侵入を阻み白血球の攻撃を跳ね返す。物理的にこのねばねばをはぎ取ってしまうのがいいのだが体の深部にできてしまうとはがすのが容易でない。バイオフィルム分解酵素を分泌できるような免疫細胞を開発できれば・・てい…
米国は日本が何らかのチャンネルを介して異世界と交信しているではないかと調査している。一見保守的でありながら”世界”のオールタナティブなあり方について情報を収集し、きっかけがあれば一気に変化するポテンシャルを持つ。かつての出島をもじってDejima…
ヒトには解剖学的な構造が異なる男と女の2種類が通常存在する。ごくまれに危機的状況に際して「鬼」と呼ばれる異なる構造を持つ個体が現れる。モーゼは角が生えていたらしい（ミケランジェロによる）が、聖書の記載の解釈の間違いともいわれている。鬼は前頭…
いろいろなメーカーが売り込みに来るが、名刺を渡されるだけではまったく印象に残らない。そこで、各メーカーごとに商標ロゴと並行して営業マンがおどる踊りを登録してはどうだろう？切れきれの踊りを見せられると「ああこれは〇×薬品の営業かあ～」とつかれ…
